2015年05月20日

詩 「 聞きたかった言葉 」


 私は母が嫌いだった。
 いつも文句ばかり言っている母が大嫌いだった。
 お母さんにはもっと笑っていてほしかった。

 母もいつしか年をとり、そして認知症になった。
 
 私は認知症の母にイライラし文句ばかり言うようになった。
 ずっと言えなかった言葉もぶつけるようになった。 
 「もっと笑っていてよ、いつも笑っていてよ」
 
 そのうち母は私の顔色を見るようになった。
 小さい頃の私がそうであったように・・。

 ある日私は気がついた。
 私が笑っているときは母も笑っているし
 私が構えているときは母も構えている。

 母にどれだけ笑ってもらえるか
 それは私がどれだけ笑っていられるか。

 「認知症になってからのお母さんも好きやで」
 「いいやろ、認知症も」
 「いいわあ、認知症も」
 そうして笑っている母がそこにいた。

 「お母さんはずーっとあんたのことが好きやで」

 そうして本当に聞きたかった言葉が聞けた。


                 by はせがわみつる 



posted by 長谷川 at 14:23| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: